Episode 1 植物に意識があったらどうなるの?
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あらすじ
Yogaをお伝えしているHashizume Rimi先生と、人工生命を研究しているNagasaka Fumioが「ロボットに心が生まれるのか?」という問題に向かって、Yogaと人工知能の関係をひもときながら、謎の迷宮を探検します。全12話のポッドキャストで、最終話では驚きの結末が待っています。
今回が第2話となるエピソード「1」です。ハロウィンの季節に考えたのは、意識を持っているのは人間や動物だけなのか?ということでした。この疑問は、意識の正体に迫るためには避けて通れないと思うのです。ハキリアリの仲間は、巣の中で菌類(キノコ)を栽培しますが、もしもキノコに意識や知能があって、ハキリアリの脳がキノコに操られているだけだとしたら?
続きはポッドキャストでお聞きください。または、上の音声データをダウンロードして直接聞くこともできます。
著作権の表記
使用した音楽素材の著作権
BGM:hitoshi by Senses Circuit, https://www.senses-circuit.com から以下の4曲を使用しています
オープニング曲: HAPPY LUNCH!(ジャズ・ボサノヴァ) by ambience
エンディング曲:おひさま-ピアノ・優しい・希望 by ambience
ジングル:透明感のあるピアノのジングル・アイキャッチ by ambience
効果音:目をパチパチまばたき01-瞬き・かわいい・歩く by hitoshi
冒頭部分
Rimi先生が出会った羽黒山伏の星野文紘さんのホームページは下記から参照できます。
http://www.luxurearth.com/jp/fumihiro-hoshino/
星野文紘 著, 「感じるままに生きなさい ―山伏の流儀」さくら舎 (2017/1/12)
本論の部分
ハコクラゲ(英名:box jellyfish)の目については、次の記事を参考にしました。
https://boxjellyfish.org/many-eyes-box-jellyfish/ 《2019年11月19日に閲覧》
レイ・ブラッドベリが1966年に発表した短編小説「(日本語題)ボクの地下室においで」原題:“Come into My Cellar”は、短編小説集「スは宇宙(スペース)のス」に含まれています。今は図書館などに行くと文庫本が見られるようですが、英語はKindle版が簡単に手に入ります。
https://www.amazon.co.jp/S-Space-English-Ray-Bradbury-ebook/dp/B00H90MPDE
ダーウィンの植物研究は、大きな図書館に行けば「ダーウィン全集」が必ずといって良いほど設置されていますので、見ることができます。あるいは、昨年、出版されたオリバー・サックスの意識研究の入門書が整理して扱っています。
Sacks, Oliver 2017, “The River of consciousness”, 日本語訳:大田直子, オリバ―・サックス著, 「意識の川をゆく」, 早川書房 (2018)
植物が考える方法
遺伝子(ゲノム)の大きさを塩基の数で比べると、ヒトは3.0x10の9乗なのに小麦は1.7x10の10乗です。小麦がヒトより6倍も大きなゲノムを持っているという事実には、ちょっとした驚きがあります。この単純な観測的な事実を見て考えると、ある気づきがあります。動物は一世代の中で寿命を終えるため、進化した動物の多くは発達した中枢神経である脳を使って考えるのに対し、植物は一世代で思考を完了しないのかもしれない、ということです。実際、小麦の例では、種子は生きているので生命の連続性という見方をすると、青々と丈を伸ばした夏の麦は光を浴びる姿に過ぎなくて、数百に数を増やして身を縮こまらせた実の姿は、秋から冬を越えるための姿であり、その命はどこまでも続いているのかしれません。
小麦の場合は、背丈を伸ばした夏の時期に経験した暴風雨の経験や日照の変化、あるいは害虫の攻撃パターンをゲノムの未使用スペース書き足して、翌年の種子がその伝言パネルのようなゲノムのメモを読んで、少しずつ根の張り方を変えたり、日照が期待できる季節に先駆けて丈を伸ばしたりします。ここに人間が登場して、例えば水害の多い地方で背丈の伸びやすい小麦を見つけて、その種を集めて翌年の作付けに利用すると、背丈を伸ばすという特性がこの一群の小麦の集団の中ではハイライトされて、特徴をもった小麦の種類を形成してゆきます。こうした特徴的な進化の仕組みは、最初にダーウィンにより注目されました。その後の遺伝子分析の技術革新に伴い、現在までに数多くの研究がなされて、次第にその不思議な秘密が解き明かされつつあります。
植物が備えている「世代を超えて考えるしくみ」を知った上で、動物がその脳を使ってリアルタイム処理として考えることを比べると、同じ「考える」という言葉でも、そのコンセプトや実現のし方は土台から違うのだと考えさせられます。